肝臓癌とは?

肝臓には様々な種類の悪性腫瘍が発生しますが日本人での場合はほとんどが肝細胞癌です。また肝臓癌は元々肝臓から発生した場合を「原発性肝癌」、他の臓器の癌から転移した場合を「転移性肝癌」と呼んで区別しています。
世界的に見た場合肝臓癌の発生率は日本を含む東アジアが最も高く、また男女別では男性は女性の3倍の発生率となっています。年齢的には男性は45才くらいから、女性は55才くらいから増加し始めます。
肝臓癌は主要な原因がわかっている数少ない癌の一種です。肝臓癌のほとんどは肝炎ウィルスによる炎症が原因となっています。肝炎のウィルスにはA、B、C、D、Eなどの種類がありますが肝臓がんを引き起こすのはB型およびC型です。日本人の場合は特にC型肝炎ウィルスによるものが肝臓癌全体の80%にもおよび、B型肝炎ウィルスによるものが15%です。したがってBもしくはC型の肝炎ウィルスに感染している人は肝臓癌にかかるリスクが非常に高くなります。
肝炎ウィルスに感染すると肝炎になります。これは全身の倦怠感、食欲不振などの様々な症状を引き起こしますが、人によっては治療を施すことなく治癒する場合があります。また肝炎ウィルスに感染しても肝炎を発症しない人もいます。このような人はキャリアと呼ばれます。
このように肝臓癌の多くは肝炎ウィルスと深い関連があるために肝臓癌にかからないようにするには肝炎ウィルスに感染することを防ぐ必要があります。肝炎ウィルスの主な感染経路としては、
●妊娠や分娩による感染
●血液製剤の使用による感染
●性行為による感染
●針刺し事故による感染
などがあります。
肝臓癌の症状
ほとんどの肝臓癌の原因は肝炎ウィルスによるものですが。肝炎ウィルスに感染しているか否かは以下のような状況で判明します。
●すでに肝炎の自覚症状が出ており医師による診断や検査によって判明する場合。
●健康診断の際の血液検査で判明する場合。
●献血を行った際に行われる血液検査によって判明する場合。
●肝炎以外の病気で医師を訪れ、その際に行った血液検査によって判明する場合。
肝炎ウィルスに感染している人は肝臓癌にかかりやすい高危険群と呼ばれますが、こうした高危険群の人が肝臓癌にならないように阻止する予防法の研究が急速に進められています。
現在最も有効なものには、C型肝炎ウィルスに対してはインターフェロンを用いる方法があり、B型肝炎ウィルスでは抗ウィルス薬であるラミブジンなどが期待されています。しかしこうした予防方法はまだ研究の途上であり、必ず肝臓癌を防げると言う段階にはまだ達していません。
肝臓癌では肝炎ウィルスによる肝炎やさらに悪化した肝硬変などが先行したり、あるいは同時に進行する場合がほとんどです。そのため肝臓癌の症状は肝炎や肝硬変の症状と見極めが付きません。これらの主な症状としては、食欲不振、便秘、貧血、腹痛、全身の倦怠感、腹部の膨満感、下痢、尿の色が濃くなる、黄疸、吐血、下血、頻脈、脱力感などがあげられます。
実際に肝臓癌であるか否かの断定はCTスキャン、MRI、超音波検査、腫瘍マーカー、針生検などによって行われます。
肝臓癌の治療
肝臓癌の場合、開腹手術による肝切除が最も確実な方法だとされています。しかし最近では穿刺療法と呼ばれる腹部に小さな穴を開けて行う治療も急速に進歩してきました。実際の治療法の選択にあたっては肝臓癌のステージ、患者の年齢や状況、希望などに基づいて決定されます。
●肝切除
従来から行われてきた最も一般的な開腹手術による肝臓癌の摘出手術です。臓器が大きいため比較的大きな皮膚切開が必要で患者の心身両面に渡る負担も大きなものとなります。しかし肝臓自体は7割近くを切除してもほぼ元の大きさにまで戻るほどの再生能力があるため切除による機能的な問題は残りません。しかし慢性肝炎や肝硬変を併発している場合には再生能力が大幅に低下するため、他の治療法を行ったりまたは併用する場合もあります。
●肝動脈塞栓術
肝動脈塞栓術とは肝臓癌に酸素を供給している血管をふさぐことで癌を壊死させる方法です。言わば肝臓癌の兵糧攻めです。
肝動脈塞栓術では通常太ももの大腿動脈にカテーテルを挿入し、患部に進めます。その後ごく小さなゼラチン・スポンジで肝動脈に栓をし、血流を遮断します。この方法は患者に対する負担も少なく1週間程度の入院で済むため非常に良く行われていますが完治する確率はあまり高くありません。そのため何回か行う必要があります。
●肝移植
日本では脳死肝移植が認められている割には実施数が非常に少なくなっています。主にドナーとなる提供者の不足が原因ですが、その代わり兄弟や親子などの近親者による生体肝移植が広く行われています。肝臓癌による肝移植の場合年齢が65才以下となっていることが多いようです。
肝臓癌と化学療法
肝臓癌では外科的療法を始めとする様々な治療法が取り入れられていますが、先に説明した肝動脈塞栓術においても治療効果を高める意味で栓をする前に抗癌剤を注入します。また穿刺療法はエタノールを注入する方法とラジオ波を用いて焼灼する方法とがあり、後者は化学療法とは言えませんが同じ穿刺療法ですのでここで一緒に説明します。
●経皮的エタノール注入療法
経皮的エタノール注入療法は純アルコールである100%エタノールを肝臓癌の部分に直接注射して癌細胞を死滅させる方法です。エタノールにはたんぱく質を凝固させる働きがあるため経皮的エタノール注入療法ではこの性質を利用しています。実際の注入にあたっては超音波画像で正確な肝臓癌の位置を見定めながら行います。癌の大きさが3cm以内で個数も3個以下の場合を対象としています。手軽にできて副作用も少ない反面、超音波画像で見えにくい箇所への注入が難しい、癌の個数や大きさに制限がある、癌が残ってしまう危険性がある、注入場所を誤ると正常な肝臓部分や血管にダメージを与えてしまうなどの短所もあります。
●ラジオ波焼灼療法(マイクロ波凝固療法)
針を直接肝臓癌の患部に射し込み、ラジオ波と呼ばれる電気を通すことで先端から熱が発生し、その熱で肝臓癌を焼いてしまう方法です。通常は超音波画像を頼りに行いますが、CTスキャン画像などをガイドにして行う場合もあります。
ラジオ波の代わりにマイクロ波を利用する方法もあります。マイクロ波で肝臓癌を焼灼する場合、マイクロ波は大変な高熱になるため他の臓器などにダメージを与えることがないように慎重に行う必要があります。
肝臓癌のステージ
肝臓癌のステージ分類としてはTNM分類と日本肝癌研究会による原発性肝癌取扱い規約による分類とがあります。原発性肝癌取扱い規約を見てみましょう。
●原発性肝癌取扱い規約
ステージ1
単発の直径が2cm以下の癌腫があるが血管侵襲を伴わない場合。
ステージ2
単発の直径が2cm以下の癌腫があるが血管侵襲を伴う場合。または一葉に限定された最大腫瘍径が2cm以下の多発性の癌腫の場合。または単発の直径が2cmを越える癌腫があるが血管侵襲を伴わない場合。
ステージ3
単発の直径が2cm以上の癌腫があり血管侵襲を伴う場合。または一葉に限定された最大腫瘍径が2cm以上の多発性の癌腫の場合。
ステージ4
一葉を越えて多発性の癌腫がある場合。または門脈もしくは肝動脈の一次分枝への血管侵襲を伴う場合。
以上1〜4のステージとなっていますが、リンパ節への転移があるもの、遠隔転移があるものについては1〜3のステージ内容には関係なくすべてステージ4となります。
また肝臓癌の臨床病期としては以下の3通りに分けられています。
1期(A):肝臓障害に対する自覚症状がない。
2期(B):肝臓障害に対する症状をたまに自覚する。
3期(C):肝臓障害に対する症状が常にある。
このように肝臓癌の症状はステージ分類による4段階と臨床病期の3段階の組合わせによって4×3=12通りに分類されることになります。
一方のTNM分類では、T:癌腫の程度、N:リンパ節への転移の程度、M:遠隔への転移の有る無し、の3項目があり各々さらに細かく分類されています。